最高の集中を作る 4つの『注意機能』
「集中してくれない」「注意散漫で全然宿題がすすまない」「なんかぼーっとしてる」
私も小さいころは宿題がなかなか進まなかったなぁ
こんなお悩み、保護者の方々や療育中の先生たちから毎日のように聞かれます。
では、「集中する」ことに必要なこととは何なのでしょう。
環境や興味関心など集中するために必要な力はたくさんありますが、今回は「注意機能」に特化してみていきます。
4つの注意機能
- キープする注意機能【持続性注意】
- 選びとる注意機能【選択性注意】
- 複数に分けておく注意機能【配分性注意】
- 交互に切りかえる注意機能【転換性注意】
4種類がうまーくバランスをとった状態が「最高の集中」を作り出す!
1つ1つ見ていきましょう。
キープする注意機能【持続性注意】
持続性注意とは、1つのことに集中状態を保っておく力です。みなさんがよく言う「集中力」はこの持続性注意を指していることがおおいですね。
持続性注意に苦手さがあると…
- 目の前の作業が終わる前に違う作業に手を付ける
- 音などの感覚刺激に反応しすぎる
- 全然違う場所の問題を解き始める
お子さん自身は集中して作業したい気持ちが強かったとしても、生まれつきの脳の特性から、注意を維持しておくのが苦手なのかもしれません。
持続性注意を育てる支援プログラムの一例としては…
本人が得意な課題を、先生がタイムキーパーとなって超短時間をクリアしてもらい、本人に成功体験をしてもらう。そこから徐々に時間を伸ばしていくなどの方法があります。
また、めっちゃたくさんの記号の中から特定の記号のみを消していく「選択抹消課題」という方法もあります。
選び取る注意機能【選択性注意機能】
選択性注意機能とは、複数の情報のなかから必要なものだけをピックアップする力です。 さらに、ピックアップしたもの以外の情報を捨てるところまで含まれます。
選択性注意機能に苦手さがあると…
- 文章問題のキーワードがわからない。
- 情報過多で情報を処理しきれなくてパニック状態になる
- 逆に特定の1つの情報に強くフォーカスしすぎて全体像がつかめなくなる
私たちは、常にたくさんの情報にさらされている中から無意識に注目するべきポイントを脳が判断してくれています。長い大学の講義中、教授が「ここはテストにでる」と言ったところは絶対覚えようと真剣に聞きますよね。
ダラダラと同じトーンで話される情報過多な講義ほど何の情報も得られないものはないです。日常生活で情報の取捨選択をしてくれているのがこの選択性注意機能なのです。
選択性注意を育てる支援プログラムの一例としては…
上述の持続性注意を育てる「選択抹消課題」をレベルアップさせ、特定の記号が隣に書いてある特定の記号だけ消すなどの方法があります。例えば△を消す。だけど隣に□が書いてある場合のみ消す。というように条件を付けて行う方法があります。
複数に分けておく【配分性注意機能】
配分性注意機能とは、複数の情報に適度に注意を分けて保っておく力です。例えば、車の運転中、自分の速度を気にしたり、周囲の車を気にしたり、前の信号を気にしたり、ナビの案内を気にしたり…。とそれぞれにどのくらいの注意量を分けておくのかを考え、同時に処理していきます。療育に関わっていると「ワーキングメモリ」という言葉もよく耳にしますが、そのベースとなるのが配分性注意機能です。
配分性注意機能に苦手さがあると…
- 工作の段取りが悪い
- 電話をしながらメモが取れない
- 板書のどこを書いてるのか毎回わからなくなる
配分性注意を育てることはワーキングメモリを育てること直結していることが多い気がします。やるべきことが多ければ多いほど段取りがぐちゃぐちゃになっていく…。そんなお子さんよくいらっしゃいますよね。
配分性注意を育てる支援プログラムの一例としては…
「二重課題」というものをよく実施します。何かをしながら何かをするというものですね。私が実際によく実施するものとしては、カード集め&タイムキープのようなものを実施します。床に散らばったカードを1から順番に集めていきながら、15秒のタイマーがならないように適宜リセットしにいく遊びです。タイマーを爆弾と言うと結構盛り上がりますよ!
交互に切りかえる注意機能【転換性注意機能】
特定の情報に向ける注意を切り替える力です。例えば…授業中黒板を見ていて、書き写すためにノートに注意を向けて、また黒板を見て…と注意の切り替えを繰り返していく力です。また、ゲームをしていてもお母さんの「ご飯だよ」の声に気づけるのも転換性注意の力によるものです。
転換性注意機能に苦手さがあると…
- 黒板からノートに切り替えるときに別のところに注意が向く
- 1つのことに集中しすぎてまわりがみえない
- どことなくぼーーっとしているように見える。
あれ…1つのことに集中できることはいいことなのでは?そう思った方もいるかもしれません。しかし…。何事もバランスが大事なのです!
著名な作家など書き始めると書くこと以外すべて忘れるということがあるらしいです。しかしそれでまともに生活できるわけがありません。一つ秀でた何かがあって、それ以外をすべてサポートしてくれるメイドのような存在がいるなら別ですが…。それでもいつかは体を壊してしまいます。
配分性注意を育てる支援プログラムの一例としては…
「交互性課題」と呼ばれるものをよく実施します。例えば、スタートの合図では青の積み木を作っていて、拍手の合図が聞こえたら赤の積み木に切り替えるなどの方法です。
わたしは自己抑制課題も含む「だるまさんが転んだ」をバリエーション豊かに行うことが多いです。
- キープする注意機能【持続性注意】
- 選びとる注意機能【選択性注意】
- 複数に分けておく注意機能【配分性注意】
- 交互に切りかえる注意機能【転換性注意】
まとめ
4つの注意機能いかがだったでしょうか。
これらがバランスよく力を発揮しあうことで、「最高の集中状態」を作り出すいち要因になるのです。
ぜひ自分の担当するお子さんの様子を「注意機能」の面からみる目も使ってみてください!
そこには新たな発見があるかもしれませんね!